| それはたった一夜の出来事 |
i-phoneが大人気のようです。 久しぶりに行列ができた新商品とのことでニュースになっていますが、よく聞くと電話通信方式の違いで使えない機能がけっこうあるんだとか。 それでも購入する人が絶えないほどの人気ぶり、確実に今年のヒット商品となるのでしょうね。 買うかどうかはともかく見てみたい…。
今回は、以前読んだ2作品でけっこう好みのツボに入っている高野作品を再々度ご紹介しましょう。 疾走感がたまらない長編です。
タイトルのグレイヴディッガーとは、中世暗黒時代に魔女狩りを行った異端審問官を復讐のため亡き者にしていくという、墓からよみがえった死者のこと。その存在を腐敗政治や警察のあり方にからめて現代に復活させています。
詐欺を繰り返す主人公の男が罪滅ぼしのために登録した骨髄ドナーの提供を控えた前日に謎の殺人集団に命を狙われるところから話は始まりますが、ストーリーの視点はころころ変わります。 追われる男と、散発する殺人事件の背中を追う刑事と、正反対の立場に視点が変わりながら展開していくことで臨場感あふれる描写になっています。 男を追うのは殺人集団とグレイヴディッガーと警察・公安。とても複雑に見える展開ですが、後半に行くにしたがってすっきりまとまってくるあたりがすばらしいです。 激しい展開の後にくすりと笑えるラストを持ってくるあたりも憎いですね。
グレイヴディッガーに扮装し殺人を重ねた犯人が誰か分かった後でも、なぜその手段をとらなければならなかったのかという必然性が若干薄い気はします。 公安は本当に極度の職権乱用に走っているのか、公安出身とはいえたった一人の政治家にこうも頭が上がらないものか、そういった点が私の知識不足なのか現実世界とは少し離れすぎた設定のように感じることも否めません。 そういった高野氏自身の思いが強すぎるきらいはありますが、ストーリーの面白さ、スピード感あふれる展開の早さ、映像を見ているかのような劇画的描写等それを凌駕してあまりある魅力が感じられる、これは事実です。
読み終わった後中世の魔女狩りについて興味がわく読み手も多いでしょう。 さて、グレイヴディッガーは史実に存在するのかどうか…それはご自身でお確かめを。
この本は…
●警察・公安の組織編制や内部事情に関心がある人 ●東京の地理や交通機関に詳しい人 ●視覚的要素も高い小説を読みたい人
におすすめします。
自ら車を運転して移動することが苦ではない性分ですが、時々あえて地下鉄も含めた電車での移動を選ぶことがあります。移動時間を利用して本が読めるという利点の他に、人間観察ができるのが楽しみなのです。世の中にはいろんな人がいるんだなということが分かってなかなか面白い…ってこれは悪趣味?
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| 私は誰なのか |
夢は潜在意識の表れといいますが、その潜在意識とは人間のもつ意識の中でどれくらいの割合を占めているのでしょうか。 表に出ている意識がごくわずかでほとんどは潜在意識だとしたら自分のことを分かっているようで分かっていないのかな…とか。特に怖い夢を見た時にふと考えたりします。
デビュー作『13階段』を読み終わってからすぐに読んでみたくなった高野和明氏の他の作品。 やっと読めた2冊目は、自分でありながら自分でない意識との戦いが描かれた作品です。
堕胎と出産というのが中心テーマですが、作品全体には身の丈を超えた生活スタイルへの警鐘や精神病の診断・治療方法といった幅広いサブテーマも組み込まれています。それらのテーマがストーリーの中で飽和するぎりぎりの線でうまく溶けあっているという印象です。
妊娠し出産を強く希望する女。今の生活を維持するために堕胎を求める男。 近年日本では堕胎件数が急増していますが、いくら女性が強くなってきたとはいえ堕胎にいたるまでの過程は昔と同じ図式であることがほとんどでしょう。 主人公の一人である夫から堕胎を求められた妻がYESと答えながらも次第に精神を病んでいくさまはとても痛々しく、ラストが気になって一気に読み進めたくなります。
突然性格や話し方が変わる、見ていないはずの状況を語りだす、といった一昔前なら霊の憑依とされていた状態は現在ほとんど精神病の症状として医学的に立証できる―もう一人の主人公である医師は専門家らしいそんなスタンスで今回の症例の治癒をめざすのですが、後半を過ぎて憑依の疑いを捨てきれなくなりはじめたあたりから少しSFっぽくなってしまったのが残念。 出産への強い執着の思いを描くには憑依の形をとるほうが分かりやすいのでしょうが、展開が唐突で無理がある感じがしました。 実は…とラストでもうひとひねりあるとよかったような。
どちらかというと女性より男性に読んでほしい1冊です。
この本は…
●出産のすばらしさを知っている、または知りたい人 ●堕胎問題の現実を知りたい人 ●精神病について研究している人
におすすめします。 (※テーマ上グロテスクな表現が時々出てくる点を念頭においてお読みください)
重いテーマの小説を読んでいると、展開が気になって同じ姿勢のまま読み進めるせいか肩がこってしまいます。途中で休憩をはさもうと思うもののチャンスである章の終わりがきてもすぐページをめくってしまい…読み終わったら肩がガチガチ。明日のためにも今夜は湿布を貼って休もうかな。 テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌
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| 岐路に立つ死刑制度 |
昨日注目の裁判の判決が出ました。 死刑という重い重い判決です。 真実とは何なのか、人権とは何なのか、いくら考えても答えが出ない印象のこの裁判。同じようなジレンマを感じた小説があります。
一応ミステリーというカテゴリー分けをされているのですが、読んでみると重厚な社会派小説という印象が強いです。 以前話題になったNHKの『ハゲタカ』を思わせる緊張感が全体に漂っています。
底辺に流れているテーマは死刑制度。タイトルについた13はストーリーの中でさまざまなものを示唆した数字で、効果的に生かされています。
死刑制度や執行までの過程、刑務官という職業の厳しさ等がとても詳しく書かれており、近づく裁判員制度のことを考えると勉強になる部分は多いのですが、それ以上に冤罪の怖さを改めて痛感しました。振り返る機会はたくさんあるはずなのに一度走り出したらブレーキがきかないのは、裁判だけでなく人の心もそうなのかもしれません。 また時間との戦いというもうひとつの顔がスピード感を増幅させていて、読者をせかすと同時にじらす憎い展開には脱帽でした。
映画『ダンス・イン・ザ・ダーク』に似た重さにはぐったりきますが、読んで満足はしても後悔はしないでしょう。 江戸川乱歩賞受賞も納得の作品です。
この本は…
●日本の裁判制度に関心がある人 ●刑のあり方について考えたい人 ●ひとつの事柄について多方面からの心理描写を味わいたい人
におすすめします。
小学生の頃初めて読んだ江戸川乱歩の怪人二重面相シリーズは強烈なインパクトがありました。なぜか怪人二重面相でも明知探偵でもなく助手の小林君が好きで、友人にからかわれた記憶があります。現代はゲーム全盛期、それでも胸を膨らませながらこのシリーズを読む小学生がいたらうれしいですね。
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