| ただ助けたかった |
連休まっただ中ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 意外に近場で過ごす予定の人が多いらしいとニュースで言っていましたが、確かに連休の中日にも関わらず近くのショッピングモール周辺が渋滞していましたね。 やはり物価高・燃料高の影響は大きいようです。
ちなみに私は家でのんびりと読書三昧。 以前読んで関心が高まった矢口作品の第二弾としてこの作品を読みました。
主人公は医師からホームレスになった一人の男性。 彼が抱える厳しい過去やホームレスになった過程を織り交ぜながら、唯一彼が支えとする昔のある事件とかかわりを持った人々とのやりとり等いくつもの小さな点が徐々につながりひとつの線となって収束していきます。
サブ主人公ともいえる中学生の少年がやや賢すぎたり、刑事が一介の市民である主人公に事件の詳細を暴露しすぎる等疑問を感じる部分はあります。 しかし全体的には現代社会が抱えるさまざまな闇が無理のないバランスで取り上げられており、ストーリーの展開にしっくりフィットしている印象を受けました。 途中で未解決事件の犯人が予想できる記述があるものの事件の真相解明についてはなかなか巧みな演出がされているのです。
また主人公の深い傷や少年との関わりで芽生える心の支えは、読んでいて胸に迫るものがありました。 助けられたかもしれないのに助けられなかった命、ただ夢中で助けた命、助けたはずがかえって苦しめた命…そして助けなかったほうがよかったのかもしれない命。 しかしたとえどんな結果になろうとも助けられた時点でその命はこの世に求められた命なのではないかという気がして、いろいろと考えさせられます。
けして大きく盛り上がる展開ではありませんが、じわじわと心にしみる小説です。
この本は…
●医師という職業の実情について知りたい人 ●ホームレスの現状について知りたい人 ●少年犯罪について自分なりの考えがある人
におすすめします。
最近時々病院にかかることがありますが、医師という仕事は本当に大変だなと感じます。当直でろくに睡眠も取れないまま翌日も終日仕事…他の職業にはない厳しさがありますよね。何より人の命を預かる職業、特殊な緊張感と共に重責を負っているだけに医師本人が心身ともに健康であってほしいです。 テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌
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| アイデンティティの揺らぎ |
今日はちょうどいい気温にそよ風が吹く絶好の読書日和でしたね。 室内にいるのはもったいない!と空き時間に外へ飛び出し、近所の公園まで自転車で向かっていつもなら重くて持ち歩かないハードカバーのページを繰りました。う〜ん贅沢っ。
さて、今日は引き続き初読ものです。矢口敦子氏については別の作品から入る予定でしたが、冒頭の数ページに目を通して一番面白そうだったこの作品を選びました。
殺人事件の真犯人は誰かを探っていくこと、体外受精という行為がもたらす人間関係を描くこと、この二つのテーマが縦横に絡み合いながらストーリーは進んでいきます。 読み応えがあるのは卵子を提供した女性と提供された女性それぞれの視点にめまぐるしく変わりながらやりとりが展開するシーンですね。お互いに自分の子だと譲らない母親のプライドがぶつかりあう様は文字の間から声が聞こえてくるような迫力。ただし互いが罵りあい主張するほど母親という立場への未練を訴えているように思えてならない点が愚かさを感じさせます。自分のアイデンティティはどこにあるのか、悩み続けた我が子への思慮はそこにあるようで実はないのですから。
惜しかったのは真犯人を挙げるべく動いていた探偵が自殺する理由が今いちはっきりしなかったこと。何となく布石は打ってあるし多少後半の盛り上げ材料になっているかもしれませんが、それをもってしても自殺の意味が不明瞭で、そのために彼の存在意義すら危うい印象を受けました。 また字数制限のせいか真犯人の殺人動機の説明がやや急ぎ足になってしまったのも残念。核になる部分なのでもう少し掘り下げてもよかったのでは。
タイトルの『VS』の意味は最後に明かされますが、私はやはりversusだととらえます。 この小説の中で繰り広げられるさまざまな対決のゆくえをぜひ見届けてください。
※この作品は現在『証し』と改題されて発売されています。
この本は…
●体外受精の実情を客観的に把握したい人 ●子供の頃友人関係に悩んでいた人 ●我が子との関係修復を模索している人
におすすめします。
医療技術は前世紀から今世紀にかけて大きな発展をとげ現在も進化を続けていますね。以前ニュースサイトでマウス実験だったでしょうか、メスどうしで妊娠に成功…という記事を見かけた覚えがあります。もはや妊娠は神秘とは言えなくなってきたのかこれでこそ神秘なのか、分からなくなりそうです。 テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌
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